民間に口頭で伝承されてきた説話、つまり民間説話の略称です。文学作品を創作したり鑑賞したりしていたのは、貴族・武家・豊かな町人などごく一部の知識層です。庶民の文化、とりわけ文字で書かれた言葉よりも話し言葉が多かった伝統的な農村社会の文化を知るには、口頭で語り継がれてきた民話について知る必要があります。
民話は、遠い昔から伝わるだけでなく、現代においても新しい民話が発生することがあり、大きく分けて神話・伝説・語り物・昔話・世間話に分類することができます。
神話は、共同体の祭儀の中で司祭者が唱えます。起源を説く創世神話、神々の活躍を描いた英雄神話などが一定の韻文で叙述されています。
伝説は、古老によって代々伝承されてきた民話です。「たたり」が起きるという言い伝えなどは、伝説に含まれます。
語り物は、専門的な語り手が、祭儀の場所などでしばしば伴奏楽器を伴って演じる民話です。中世や近世における英雄の業績などが語られます。語り方には一定の形式が存在します。
昔話は、語り爺や語り婆が家の炉端で子供達に話して聞かせる民話です。「昔々あるところに」「トント昔あった」などの決まり文句で始まり、1文が「…したとさ」という伝聞の形で終了し、「めでたし、めでたし」「ドンピン、サンスケ」「一期栄えた」などの決まり文句で終了します。
世間話は、諸国を渡り歩いた人々や、現代ならば情報通の人々によって語られる民話です。世の中で実際に起きたと言われている不思議な話が語られており、現代の世間話である都市伝説や学校の怪談はそれにあたります。
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