稲羽の白兎（イナバのシロウサギ）

隠岐の島のウサギは、本土に渡るためにワニ（実際はサメであったとされる）を騙すことにしました。まず、ウサギはどちらの仲間が多いか比べようともちかけて、ワニを島から本土の気多の前まで並ばせ、数えるふりをしてその背中を渡り始めたが、あと少しで目的地というところで、口を滑らせて、意図をばらしてしまいました。怒ったワニはウサギの皮をはいでしまったのです。

そこへ、この辺りに住む八十神と呼ばれる神々が通りかかりました。彼らは稲羽に住むヤガミヒメに求婚に行く途中でした。八十神は体中が痛くて泣いているウサギを見ると、おもしろそうに笑いながら尋ねました。「これこれウサギ、いったいどうしたというのだ？」ウサギは泣きながら答えました。「体中が、痛くて痛くてたまりません。」「それはかわいそうに。」神々の中で、一番いたずら好きな神様が「いいことを教えてやろう」と、ウサギに塩水を浴びて風に吹かれるように勧めたのでした。その通りに行動したウサギでしたが、治るどころか、皮はこわばり、裂けて、痛みが増してしまいました。

次に通りかかったのが大きな袋を背負った大国主。先に通った兄弟の中で一番年下でしたが、誰よりも知恵があり、そのうえ心の優しい人でした。兄さんたちは、しゃくにさわってなりません。それで、弟をいじめてばかりいました。ウサギから事情を聞いたオホナムヂは、真水で体を洗い、ガマの穂に包まるようにと勧めました。

もとの体に戻ったウサギは、悪い八十神達は決してヤガミヒメを妻にすることは出来ないと予言しました。結局、ヤガミヒメは八十神たちを拒み、大国主に嫁ぐと宣言したのです。大国主は、ヤガミヒメをつれて、出雲の国へ帰ったのでした。

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